設計者はどこ?
「今、フィリピンからVRで現場入ってます!」
「そこの壁面、あと5ミリ内側に調整できないかな?」と、設計者の那須貴寛が指示を出す。それを受けて現場の施工担当が職人に指示を出す。一見、何げない風景だが、これは一昔前までSFの世界だった。なにしろ、設計者の那須はフィリピンにいてVRゴーグルで現場を見て、指示を出しているのだ。しかも、3年前からフィリピンに滞在する那須は、一度も現地を見ずに設計・施工を行ったのだという。
フィリピンにオフィスを立ち上げたのは、2017年(11月)のことだ。当時のオノコムが抱えていた最大の課題は、3Dデータを扱うエンジニアの不足だった。デジタル化を武器に急成長を遂げてきた事業にブレーキがかかりかねないと危機感を抱いた小野は、入社8年目の那須に特命を下す。
「来週からフィリピンに行けるかな?設計データを3D化するエンジニアを集めてオフィスを立ち上げてほしんだ」と、いきなり突拍子もないミッションを与えられた那須だが、この会社ではよくあることと冷静に受け止め、翌週にはフィリピンへ飛び立った。
フィリピンに何ひとつコネなどなかった那須だが、General ManagerのRolandと共に現地の大学や企業を回り続け、オノコムが求めるスキルを持つ優秀なエンジニアを集めた。
「フィリピンには若くてやる気のある人材がたくさんいて、募集をかければ翌日には100名くらい応募があるんですよ。しかも、相当スキルが高い。最初はスモールスタートでしたが、どんどん事業が拡大して2020年10月には新しいオフィスが完成し、今では14名が活躍するまでに拡大しました。今は彼らの存在なくしてVDCが成り立たないくらい強力な戦力となっています」と、那須は話す。
なぜフィリピンにいながら、日本の物件を設計施工できるのか、それはオノコムがデジタル建築生産メソッドVDC(Virtual Design Construction)をつくりあげたからにほかならない。VDCの技術と価値は、間違いなく建築の未来を変革するだろう。ここでは割愛するが、その誕生の背景には、数え切れないほどの物語があった。
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