以下でもない、以上でもない。
感動しない竣工式。
建物完成時に関係者を集めてお披露目する竣工式は、建築プロジェクトで最も盛り上がるイベントのひとつだ。しかし、オノコムの竣工式は、ちょっと様相が異なる。 「別に悪い話じゃないのですが、最近うちの竣工式って感動がないんですよ。昔は、足場が取れて建物がお披露目されると『わぁ!』って歓声が上がったんですけど、今は『まあ、こうだよね』とか『イメージ通りだね』とか、淡々としているんですよ」と、デザインセンター長の幸克洋は、オノコム“あるある”を話す。
なぜ感動がなくなったのか?それは3D設計+点群+BIM+VRによる先進テクノロジーを活用したVDC(Virtual Design and Construction)を導入したため、設計段階で外観・内観はもちろん、窓から見える景色や日照までバーチャルモデルで確認済みだからである。オノコムの竣工式は、すでにVRで見た建物を、ただ現実世界で確認するだけのイベントになってしまったのである。
「感動がないのは寂しいけど、『イメージと違うじゃないか』とか『こういう仕上がりになると思わなかった』といった完成後のクレームが、ほぼほぼゼロになったことは、喜ばしいですね。以前は『打ち合わせで、ここを直してほしいって言いましたよね』など“言った言わない”のトラブルもあったのですが、VDCのプロジェクトでは問題はまず起きません。それは我々にとってもお施主様にとっても大きなメリットといえます」(幸センター長)
DXが進み、バーチャルで随時状況を確認できるようになった結果、近年では、施主と一度も会わないまま、基本設計から竣工まで終わってしまうプロジェクトも増えてきた。
実際、コロナ禍で海外への出入国が禁止になった時期に請け負ったプロジェクトは、発注企業の社長がタイから帰国できなくなり、最初の打ち合わせから完成まですべてリモート+VRでやり取りが行われ、起工式もモニター越しに社長が参加しただけでプロジェクトが完遂してしまった。その社長からは『一度も日本に行くことなく、これほど完璧にプロジェクトを遂行できると思わなかった』とお褒めの言葉をいただいた。
感動のない竣工式は、VDCの開発によって実現した、寂しいようで実はうれしい、特別なイベントなのである。
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