宇宙エレベーターによる宇宙旅行が人気を博し、オフィスや工場でヒューマノイドが働く姿が日常となった2080年。日本で新たな建築プロジェクトが立ち上がった。2025年に建築された歴史的な建物を大胆にリノベーションし、ロボティクスパークを建造するというのだ。
プロジェクトを任されたリーダーは、半世紀以上前に施工された建物のデータを空間スクリーンに展開、基礎や躯体の構造・強度などを3Dモデルでチェックしていた。
映し出されているのは、21世紀前半に使われていたBIMソフトウェア「Autodesk Revit」の3Dモデルに、施工段階で撮影した点群がプロットされたデータだ。埋設されている杭や配管まで正確に可視化されており、このデータをチェックすれば実工事で生じたミリ単位のズレまで容易に確認できる。
「このデータを残してくれたおかげで建築物の意匠や構造を生かしたまま、シミュレーションや改修が簡単にできる。まだ、技術が確立されていなかった半世紀以上前に、このデータを作成した技術者の慧眼に感謝しなければならないな」とリーダーは、AIアシスタントに向かってつぶやいた。
空間スクリーンに映し出されたファイルのフッターにはONOCOMのロゴが刻まれていた。
―― 時は戻り2024年の現代 ――
VDC推進室Technical Managerの林和弘は、点群とBIMを組み合わせて施工時のアーカイブデータを蓄積する意図を、以下のように話す。
「これまで点群データは、現場の測量やプレゼンテーション、法令チェックなどが主な用途でしたが、これからは着工から竣工までの主要な工程を点群化してBIMと重ね合わせたアーカイブに利用していきたいと考えていいます。このデータを蓄積しておけば築後数十年経っても施工図と実工事に齟齬がないか簡単に確認でき、埋設配管や杭まで可視化できますから、メンテナンスや改修、リノベーションが容易になります。建築物がデジタルツイン化される時代には必須の技術になるはずなので、他社に先んじて取り組みを進めることは、オノコムの競争優位につながると思います」
そう語る林の視線は、遥か遠い未来を展望する。オノコムが掲げる「なければつくる」の理念は、時間を超越した未来の建築にまで影響を及ぼそうとしている。
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