CASE-静岡県 特別養老老人ホーム

介護スタッフの意見を徹底的に取り入れた、快適な住まい。静岡県初の木造による老人ホームを施工。

グループホームや老人ホーム、ケアセンター、ワークセンターなどを運営し、静岡県牧之原市、島田市において福祉の重要な役割を担ってきた「社会福祉法人や まばと学園」。新たに地域からの強い要望を受けて2010年8月にオープンした地域密着型小規模特別養護老人ホーム「グレイス」の施工をオノコムが担当。 静岡県で初となる木造老人ホームとなりました。

 

【高齢化が進む地域待望の老人ホーム。住民と話し合いを重ね、ニーズを捉えた施設形態を模索。】

日本有数のお茶処として知られる静岡県牧之原市。地域密着型小規模特別養護老人ホーム「グレイス」は、福祉施設を多角的に運営する「やまばと学園」が、地域からの強い要望を受けて2010年8月にオープンさせた老人ホームです。
計画が始まった当初、どのような性格をもった施設にすべきか、規模や形態については「やまばと学園」「市」「地域」の3者による話し合いが重ねられまし た。地域からは家庭内で介護の中心を担っている女性の参加も呼び掛け、介護の現状と問題点を正確に把握。施設のあり方を丁寧に検討してきました。その結 果、広範囲から利用者を集めるのではなく、地元に密着し、地元の年配者が地域や家族とのつながりを保ったまま入居できる施設をつくるという方向性が固ま り、入居定員29名の地域密着型小規模特別養護老人ホームとして運営することが決定しました。

静岡県初となる木造福祉施設。木造ならではの温もりが感じられる「家」のような空間です。

【家のようなくつろぎをめざし、静岡県で初となる木造構造を採用。】

設計者はプローポーザル形式で選定され、施工はオノコムが請け負うことになりました。
「いかにも老人ホームという雰囲気ではなく、家のように温もりが感じられる雰囲気にしたいと考えていました」(神谷施設長)
施設側が抱いていた希望を受け、住居スペースは木造で建てられることに。木造構造の老人ホームは2004年から認められたものの、実際に建てられるのは全 国でもまだ珍しく、静岡県内では初の申請となりました。そのため、施設と県、県と国の確認作業が慎重に繰り返され、最終的な建築許可がおりるまでに約1年 がかかりました。
この申請作業と平行して行われたのは、ユニット型施設に対する施設スタッフの理解を深める勉強です。既存施設の見学や講習会にも積極的に参加しました。
「1つのユニットにつき8〜10の個室を設け、さらに共有スペースも充実させることで、プライバシーと共同生活のちょうど良いバランスを取りました。相部 屋はせっかくご家族が遊びに来られてもどうしても他の入居者に遠慮して短時間の滞在になってしまいますが、個室なら気兼ねなく長く滞在していただけま す」(神谷施設長)
また、設計が決まってからは、スタッフによる準備委員会が組織され、雰囲気作りからテーブルや椅子、ベッドなど、設備の選定が行われました。新しい施設づ くりに多くのスタッフが積極的に関わることでひとりひとりの意欲が高まり、同時に現場の意見を取り入れた快適な「家づくり」が行われました。

ゆったりとした広さの個室。遊びに来たご家族やご友人とゆっくり過ごせ、週末には宿泊することも可能です。

【洗面台やトイレなど、実物を現場にセッティングし、使いやすい位置を1cm単位で検証】

施工上、最も難しかったのは「グレイス」の特徴でもある、複合構造の実現。
「木造とRC、さらに鉄骨を組み合わせた構造のため工程が複雑です。それに加えて敷地面積が限られているため、狭いスペースの中でいかに順序よく作業をするか、工程を熟慮して考えて工事を進めました」(オノコム現場監督/北村)
ムダのない工程を組むことで、計画どおりの工期内で完成させることができました。工事が進む中、施主、設計事務所、オノコムの3者の打ち合わせが週に1回のペースで行われ、最終的な仕上がりが検討されていきました。そのなかでも、設備 の高さや手摺りの位置など、スタッフの介護のしやすさについては綿密に検討。オノコムは現場事務所内に実際に使用する予定のトイレや洗面台などを設置した 簡易的なモデルルームを用意し、スタッフの方とともに、手摺りの高さ、洗面台の高さ、車いすが通る幅の確保など、1cm単位で調整しました。「機能面では実際に介護する私たちでないと分からない部分がたくさんあります。高さが1cm違うだけで、使いづらかったり、入居者の方に不自由をかけたり します。細かなところまで使いやすさを追求できたことでハード面では自信が持てました。あとはスタッフがやるだけ、という感じですね(笑)」(大石事務 長)
オープン前にはスタッフの方が宿泊し、実際に生活することで見えてくる問題点を事前に解消していきました。
「それでもオープンから1ヵ月が経って入居者の方の生活が始まると、ここにも手摺りが欲しい、などの要望が出てきます。今はさらに使いやすくするための作業を行っています」(板倉建設整備担当主任)
施設スタッフの要望にひとつひとつオノコムが応えることで、安心して過ごせることを追求しています。

手摺りの位置、洗面台の位置など、様々な部分で介護のしやすさにこだわりました。

【木の温もり、平屋の家庭的な雰囲気が見学会で好評。新しい生活がスタート。】

地域との話し合いを大切にし、1歩1歩完成に近づいてきた「グレイス」。見学に訪れた方たちからは、「落ち着ける」「ほっとする」などの、うれしい感想が寄せられ、入居者募集には定員を超える応募が集まりました。オープンして1ヵ月。「これから入居者の方とスタッフの信頼関係を少しずつ築いていき、家としてくつろげるように努力していきたいと思います」(神谷施設長)「ホールなどを活かした地域の人たちとの交流にもこれから徐々にトライしていき、本当に地域に根ざした施設にしたいと考えています」(大石事務長) 「共に生きる」「ひとりひとりがかけがえのない人」という、「やまばと学園」グループの理念に沿った新しい施設に地域の期待が集まっています。


写真左から、神谷施設長、大石事務長、板倉建設整備担当主任。

地域の介護予防拠点としても期待されるグレイス。
イベントを行えるホールや古民家風スペースも用意されています。
ホールは音響のいい天井形状に。