代表の小野から「違う会社になるくらい思い切ってデジタル改革を進めてほしい」との極秘ミッションを受けた杉浦CDOは、使命感を悟られないようにそーっと静かにオノコムに参画した。しかし、会社の実情を知り、理想と現実の間に横たわるグランドキャニオン並みに深い溝を前に、しばし愕然とした。
当時のオノコムのIT環境は、お世辞にも先進的とはいえなかった。パソコンが壊れると、近所の家電量販店で適当なものを買い、自ら初期設定をする。社内に何台パソコンがあり、何のソフトの何バージョンが入っているか誰にもわからない。全支店に配布されたiPadは半年以上電源さえ入れられていない状態だった。
想像を遥かに下回る現実を前に、杉浦CDOは「どこから手をつければいいのか」と頭を悩ませたが、「まず全社のIT環境を把握しよう」と、3ヶ月間かけて本社と支店すべてのITリソースを調べてリストを作成した。そのリストをもとに優先順位を定め、「生産性に悪影響を及ぼす低スペックパソコンが最低30台あるので、緊急に入れ替えてほしい」と上申した。
最新式のハイスペックなパソコンを導入すると同時に、クラウド(Google Workspace)を活用した業務環境への移行にも着手した。しかし、社内にハイスペックなパソコンの能力をフル活用したり、クラウドを自由自在に使いこなしたりする人材は、存在しない。それもそのはず、昨日まで紙の図面を広げて、EXCELで工程を管理し、電話でコミュニケーションを取っていた社員たちに、いきなり「明日からクラウドで仕事してください」といっても、使いこなせないのは、当然といえば当然である。
この状況をどうやれば変えられるのか、杉浦CDOの悩みは尽きない。悩んだ末に出した結論は、全社員に直接会って意見を聞きつつ、クラウドで仕事がどう変わるのか知ってもらうという、極めてアナログな解決策だった。
「万里も道も一歩から」、オノコムのデジタル化は、この杉浦CDOが踏み出した一歩からはじまる。
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